ここ近年、ワインの値段が世界的に変動(値上がり)しています。
その理由はなぜか?今回はワイン輸入業者側から見た実際の値上げ理由を説明していきます!
主な原因
値上げの主な原因は4つ
- 酒税法の段階的価格改定
- 為替レート
- 資材、原材料の高騰
- 蔵出し価格の高騰(郵送費も含む)
それでは1つずつ読み解いていきましょう!
酒税法の改定
2017年度の税制改正で酒税法の一部が変わり、2020年10月以降、お酒のルールは段階的に変わってきています。
ビールの例
お酒売り場に行くと「ビールを飲みたいけど高いから、第3のビールにしよう」といって我慢している人は多いのではないでしょうか。
そんな我慢もあと3年ほどで必要がなくなるかもしれません。というのも、2020年から行っている酒税法の改正によって段階的にビールが安くなっているからです。
財務省によると…
類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、税収中立の下、酒税改正を実施します。
つまり、ビールに酒税がかかりすぎて高くて売れなくなっている一方で、各ビールメーカーが出している新ジャンルのお酒が売り上げを伸ばしているため、税率を一律にして条件を揃えようということです。
従って、実質ビールは値下げ、発泡酒と新ジャンルは値上げになります。
ビールと発泡酒と新ジャンルの違いについて気になる方はこちらの表をご覧ください
ちなみに、2023年10月以降は発泡酒と新ジャンルが統合され、ビールと発泡酒の2つになります。
2026年10月はビールと発泡酒が統合され、「発泡性酒類」と呼ばれるようになります。
また、そもそもの課税の背景について調べてみました。
<課税の背景>
●お酒が嗜好品に区分されるため
●健康面・道徳面・社会面における影響を考慮して
●財政収入を確保するため
上記の理由があることから、アルコール度数が高いものほど、高い税率が設けられる傾向にあります。日本だけではなく、諸外国でも設けられていることが多い、メジャーな税金です。
ワインはどうなるの?
ワインは果実酒に分類されますので、2023年10月に税率が上がります。
ワイン1本あたりで見るといくらになるでしょう?
答えは、ワインボトル1本あたり7.5円です。
これを見る限りではそれほど大きくない値上げとは言えそうですね。
為替レートの変動
ワインは国産で作られるだけではなく、海外からの輸入ものがほとんどです。
そのため、当然為替によって価格も変動するのです。
現在の為替レートはどういう状態なのか見ていきましょう。
円安傾向が続いている
こちらが2021年年末から2023年のドル円チャートになります。
2022年の10月をピークに円安が進み、一時は2023年1月に127円まで円高になりましたが、またしても円安が進行しています。
ユーロも基本的にはアメリカドルと同じ動きをしています。
ワインはアメリカやチリなどの新興国(ニューワールド)のワインも増えてはいますが、圧倒的にヨーロッパのワインの輸入量が多いのでユーロ対円の値動きにも注意が必要です。
2023年7月の為替レートです。
現在はユーロの方が円安が進んでおり、ワインを輸入する際の物価高の大きな要因になっています。
このまま円安が進むとさらに輸入品の価格が上がると予想されます。
仮に現地で10ユーロで購入できるワインが日本ではいくらになるか計算してみましょう。
1ユーロ=130円だった場合は1300円で買えるところが、1ユーロ150円になると1500円が必要になるということです。
低価格の商品だとたった200円の違いに見えますが、5000円を超えるようなワインになってくると平気で実質より1000円も高く購入することになってくるのでえらい違いですよ!!
資材、原材料の高騰
ワインを作る際にはブドウ以外にも様々な原材料が使われています。
コルクやボトルの瓶、キャップシール用のアルミ、ボトルの1番上に被せるアルミキャップなんかも全て資材不足のため入手が困難になっていました。
入手困難になる理由としては、様々な要因があげられます。以下はその一部ですが日常生活用品にも影響が及んでいるので、実感があるものも多いのではないでしょうか。
- ウクライナ戦争による原油高、物流の混乱(ガラスやアルミ、石油燃料など原料の不足)
- 自然災害による干ばつ、酷暑、山火事、水不足(ブドウ栽培やコルクができない)
- ストライキによるサプライチェーンの混乱(人件費、運賃コストの上昇)
入手困難になると入手するためには普段よりも高い料金を払って差し出すか、生産を諦めるしか方法がなくなります。
生産量が少なくなるとそれを作る農家さんやワイナリーの収入がなくなるため、生活ができなくなります。
蔵出し価格の高騰(郵送費も含む)
上記のコストアップとも関連がありますが、蔵元(ワイナリー)が提示する価格も上がってきています。
正確な数字は各ワイナリーやネゴシアンと呼ばれる仲介業者の値付けには寄りますが、適正な取引価格そのものが上がってきているという状況です。
その要因についてもまとめておきましょう。
- 希少性(生産量減)
- 需要と共有のバランス(中国など諸外国での需要の高まり)
- 設備投資(最新技術の投入、ワイナリーの変革など)
希少性
希少性に関しては、ブルゴーニュが顕著です。
ブルゴーニュは2019年から2022年にかけて霜害の影響でブドウの収穫量が著しく減少しました。
そのため、この期間に造られたワインは生産量が少ない上に、価格も1〜2割ほど高い傾向にあります。
需要と共有のバランス
需要と供給のバランスに関しても同じブルゴーニュ地方が当てはまります。
世界的に人気のあるブルゴーニュワインは、多少価格が上がっても「買いたい!」という人はいるのです。
ボルドーワイン、中でも5大シャトーと呼ばれるトップワイナリーもそうです。
中国人が一時爆買いしてしてからというもの、30年前は3万円内で購入できていたものも今では10万円以上する庶民には手が届かないものとなってしまいました…。
設備投資
設備投資に関してですが、ワインは毎年同じ作り方をしていれば美味しいものができるとは限りません。
むしろ近年は自然災害に争うように、もしくはうまく付き合っていくように、技術が発達してきて美味しいものを追求できるようになってきました。
毎年1年に1回の収穫から醸造、熟成を行うわけですが、少しでも美味しいものを造りたいというのが本当にワインを愛する醸造家たちが目指すところなのです。
そのための探究心や設備投資にかける想いは凄まじいものがあります。
これは一つの例ですが、小さな家族ワイナリーが重機を買うために1000万円を投資する。それによって作業の負担が減り、より畑の管理が行き届き、高品質なブドウを使ってワインを作れるようになるなんてこともあります。
今後も続くの?
ここ1、2年ほどの大幅な値上げほどではないにしても、今後もこの傾向は続く可能性が高いです。
大幅な値上げに関しては、ウクライナ戦争の長期化、自然災害、世界的な高級ワインの需要増など要因についてご説明してきました。
これらの要因は短期スパンで変動するものではなく、長期で継続的に値上げとなる要因です。
歴史的にみてもワインの価格が下がるということはほとんどありません。
だからと言って「ワインは高くなるから購入を控えよう」と消極的になるのではなく、積極的に学んでみて欲しいと思います!
投資目的で購入するのであれば早ければ早いほど後々のリターンが大きくなる可能性があります。この点についてはまた別の記事で触れたいと思います。
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